前回はブルーカーボンのお話をしました。今回はそのブルーカーボンの規模を大きくした考え方「海洋パーマカルチャー」についてお話ししますね。
まだまだ聞きなれない「海洋パーマカルチャー」とは何でしょうか? 海洋パーマカルチャーを簡単に説明すると「海×養殖×生態系」づくりのこと。
そもそも「海洋パーマカルチャー」の「パーマカルチャー(Permaculture)」というのが、「パーマネント(永続性)」×「アグリカルチャー(農業)」を組み合わせた造語。
「(自然生態系を反映した)永続的な農業」を意味し、その海バージョンとなるのが「海洋パーマカルチャー」なのです。要するに「海洋パーマカルチャー」は持続可能な海の養殖環境づくりのこと。
海に海藻の生息地などの生態系を再現・海の生物を再生させることで、海藻や魚介類の持続可能な収穫を目指します。
つまり「海洋パーマカルチャー」とは、「海洋養殖」の一種といえるでしょう。
ではなぜ今、海洋養殖の一つ「海洋パーマカルチャー」が注目されているのでしょう?
それは、森に植林するのと同じように、海に海藻を植え育てることでもCO2を吸収できるからです。学術誌「Current Biology」(2019年8月29日)に掲載の米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の海洋科学者、ハリー・フレーリック氏らの論文によると、
“カリフォルニア州沖の米国海域のうち、3.8%の範囲で海藻を養殖すれば、同州の農業による炭素排出を相殺できるという。”(参照記事:海藻は「温暖化対策のカリスマ」、最新研究 炭素を貯蔵し、海の酸性化を和らげ、バイオ燃料にもなる万能選手)
すでに海洋パーマカルチャーの試験は、ハワイ、フィリピン、プエルトリコ、タスマニアなど世界の多くの地域で実施されています。
そしてさらに海洋パーマカルチャーは、2040年までに地球に住む約90億人に「食料、燃料、肥料」を提供する可能性を秘めているともいわれているのです。
さまざまな資源として、また地球温暖化を抑制する切り札としての「 海藻」や「ブルーカーボン」、そして「海洋パーマカルチャー」。
近い将来、海洋パーマカルチャーが広がり、産業全体を創出することで、地元の海洋コミュニティの生活を改善し、経済を強化できるかもしれませんね。
【参考】
・ポール・ホーケン編著 2021年「ドローダウン:地球温暖化を逆転させる100の方法」山と渓谷社
・TED「Can seaweed help curb global warming?」