「人為的な気候変動、広く悪影響」 国連・IPCC報告書をご紹介します。

「気候変動が自然や社会へ与える影響」について、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2月28日、報告書を公表しました。

IPCCとは、世界各国の政府代表や、国際機関の専門家が集まった国連組織。

気候変動に関する論文や観測・予測データなどから導きだした最新の科学的な知見を評価し、定期的に報告書をまとめています

今回の報告書では、気候変動の影響や適応、脆弱性などが分析され、

人間が引き起こした気候変動は、自然と人間に対し、広範囲にわたる悪影響と、それに関連した損失と損害を、自然の気候変動の範囲を超えて引き起こしている」との見方が示されました。

では具体的に気候変動の悪影響とはどのようなものなのでしょうか。

例えば気温が上昇すると、これまで生き物が生息してきた場所や、生態系の構造が変化します。

海なら国内の昆布の一部などが採れなくなるなど、漁業や養殖業に影響が及びます。さらに海面が上昇すると国が水没したり、海沿いでは洪水も起きるでしょう。

水害が増える一方、別の地域では干ばつによる水不足や、気温の上昇による農作物生産への被害。飢餓や食糧危機が起きたり、熱波で亡くなる人や感染症などの懸念も。

そして今回、世界人口約78億人のうち、現状でも世界最大36億人が気候変動に対応できず、途上国の貧困層など、社会的に弱い立場にある人々が、もっとも気候変動のリスクにさらされていると提言しています。 

すでに気候変動が、人間と自然のシステムを破壊していることは、疑う余地がありません。

また予測される悪影響や、関連する損失と損害は、地球温暖化が進むたびに拡大。気候変動の影響とリスクも複雑化しており、管理が難しくなっているのです。

平均気温の上昇を、1.5度に抑えると、損失を大幅に低減できますが、損失を完全になくすことはできません。

また一時的にでも1.5度を超えると、さらに深刻な影響が広がり、一部は不可逆的なものになると予測されています。

ここまでIPCC報告書をご紹介してきました。

さて、こうした気候変動の緊迫した状況の中で、2月24日ロシアがウクライナに侵攻。気候変動に対処しようとする、各国の脱炭素政策に影を落としています。

ロシアから天然ガスを輸入できないヨーロッパの国々が、石炭の使用を増やすことになれば、脱炭素への取り組みが後退を迫られる可能性も。

不穏な世界情勢の中で、IPCC報告書が示した「人為的な気候変動による広い範囲の悪影響」を防ぐためにも各国が団結して、気候変動の対策に取り組む必要があるのです。

次の10年間、社会が何を選択し、どう行動するかで、未来が変わります。

気候変動に対して、完璧に行動できないからとためらったり、あきらめるより、たとえ不完全でも気候変動に対するアクションを起こす方がよいとわたしたちは考えます。

「完璧な1人より、不完全な10人、100人、そして1000人へ」

わたしたちも不完全ですが、一人ひとりが、毎日の生活の中で気候変動に取り組むことで、未来を変えていけると信じています。