今こそ知りたい。話題のCOP26を解説。

英スコットランド・グラスゴーで開かれた、国連気候変動枠組み条約締約国会議(以下、COP26)が11月13日、「グラスゴー気候合意」を採択し、閉幕しました。

連日、多くのメディアで取り上げられたCOP26「気候変動」対策、最後のチャンスとも評されたCOP26のポイントやCOPの歴史、日本のポジションを振り返ります。

そもそもCOPとは?

COP(コップ)とは、締約国会議(Conference of the Parties)の略称。国連気候変動枠組み条約※1に加盟する、197カ国・地域※2が参加し、 温暖化対策の国際ルールを話し合う、たいへん重要な会議です。


1992年、ブラジル・リオデジャネイロの国連開発環境会議(地球サミット)で「国際気候変動枠組み条約」が採択されたことをきっかけに COPがスタート。

条約加盟国が話し合って、気候変動などの取り組みを決める場として、COPがうまれました。そして1995年ドイツ・ベルリンのCOP1を皮切りに、ほぼ毎年開催されています。 

COPで決めたことを守らなくても、罰則などはありませんが、COPでの決定事項は、世界の大きな方向性を示し、国際公約としての拘束力をもっているため、各国が足並みをそろえようとしているのです。

ちなみに第1回目の会議がCOP1、第2回目はCOP2と、開かれた回数の名前で呼ばれ、日本の京都で開かれた第3回COP3の「京都議定書」で、国際的にはじめて温室効果ガス削減の数値目標が盛り込まれました

そしてCOP21では、産業革命前とくらべ、「世界的な平均気温上昇を、2°C以内を保ち、できれば1.5°C以下におさえること」を目指した「パリ協定」を採択。

そしてその後、世界の大きな転換点となったのが、地球温暖化や気候変動について、科学的に評価する国連組織IPCC※3の第6次報告書※4です。

その報告では、人間活動による地球温暖化は「疑う余地がない」とはじめて断定されました。人間が地球温暖化の原因という、衝撃の事実が確定したのです。

すでに現時点で、産業革命前よりも約1.1°C気温が上昇する、地球温暖化を引き起こしており、気候変動問題への対策は待ったなしの状況に。

今後どのように気候変動に対応していくか、世界の本気度が増したタイミングで開かれたのが、今回のCOP26なのです。 

 

COP26の成果と、残された課題

COP26は、世界の気温上昇を産業革命前とくらべて1.5℃におさえ、気候変動がもたらす最悪の事態を回避することを目指しました。今回のCOP26で注目されたテーマと、その成果を抜粋します。

① 「1.5℃目標」へ向けた、温暖化抑制への取り組み。
→2030年までの「温暖化ガス 削減目標」の引き上げ、また「石炭の段階的な削減」を明記。(各国がせめぎあい石炭の段階的な「廃止」までは踏み込めず)

②「国際排出枠取引制度」の詳細なルールを決める。
→「パリ協定」運用ルールで、積み残されていた温室効果ガス削減量の国際取引の指針もまとめられました

③ 途上国への資金支援を確かなものにする。
→2025年以降、先進国から途上国の環境対策のため、毎年1000億ドル以上の資金を動員する目標を、2024年まで集中的に議論するプロセスの立ち上げを決定。
また2025年までに先進国からの支援を、2019年水準の2倍にすることを要請しています。

 今回のCOP26では、さまざまな考えをもった各国が合意できた点は、評価されるものの、明確な道筋を定めるという意味では、各国から十分な排出量削減に関する約束を引き出すところまでいけませんでした

現在各国が、今後10年で表明している排出量削減のままであれば、世界の気温は2.4℃上がってしまいます。これを1.5℃におさえるには、世界全体で2030年までの排出量を、2010年の水準から45%減らさなければならず、このギャップが今後の課題として残されました。

COP26、日本のスタンスは?

それではCOP26で、日本はどのような動きをしたのか、2020年の取り組みからみていきましょう。

日本は2020年10月に、2050年の温室効果ガス排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)を表明。2021年4月、2030年に2013年度比で、46%削減する目標を打ち出し、エネルギー基本計画では、石炭火力発電所の2030年度の電源に占める割合を「19%」と示しました。

しかしCOP26議長国のイギリスは、「先進国は30年、途上国は40年まで」「石炭火力全廃」を求め、日本と世界の温度差が明らかに。

11月1-2日にかけておこなわれた首脳級会合で、岸田文雄首相は、日本が最大100億ドル(約1.1兆円)の追加の資金支援をおこなう考えを示し、世界から歓迎される一方、アジア地域への支援策として、火力発電所を活用する方針も示し、批判されています。

環境NGOの国際ネットワーク「気候行動ネットワーク」(CAN)が温暖化対策に後ろ向きな国に贈る不名誉な賞「化石賞」に、前回のCOP25に続きまたも日本が選ばれる結果となりました。 

 脱炭素社会の実現は、地球に住む全員が無視できない問題です。残念ながら日本は国際的に、気候変動問題に対する意識が低いと言わざるをえません。

この意識を変えるためにも、COP26や気候変動に関心を持ち、少しずつ今の快適な暮らしを手放すなど、自分たちにできるアクションを起こすことで、地球や未来の人々の暮らしを守っていきたいですね。

※1 UNFCCC: United Nations Framework Convention on Climate Change
※2 2021年11月現在
※3 気候変動に関する政府間パネル
※4 第1作業部会報告書「自然科学的根拠」

参考記事:
公益財団法人 地球環境戦略研究機関 各国首脳ステートメント原文とIGES仮訳
WWF スクール・パリ協定資料
Newsweek日本版 31日から温暖化対策のCOP26開催 紛糾必至の争点まとめ
日経ESG 【COP26速報】「1.5℃」強調、クレジットのルール合意 石炭火力の「段階的な削減」盛り込む
日本経済新聞 イチからわかるCOP26 合意文書を採択、「石炭を削減」
首相官邸 COP26世界リーダーズ・サミット 岸田総理スピーチ